岡山の家庭医の読書・勉強ブログ

岡山の家庭医のブログです。総合診療や家庭医療、哲学、ビジネス、いろいろ。

本を積め。

読書記録。

今回は永田希さんの積読こそが完全な読書術である」です。

 

現代の情報の濁流(=他律的積読)に飲まれないようにするために、

その拠り所となるような環境をつくる。

自分自身の方向性をもって、そのテーマに沿った気になる本を積む。

これこそが自律的積読、つまりビオトープ積読です。

 

ビオトープとは、「ある場所の生態系」のこと。

水鉢に水草を植えたり小魚を飼ったりして癒やされるアレです。

自分なりの積読環境をつくることを、ここではビオトープになぞらえています。

 

 

この本にはこれまでに出版された様々な読書法に関する書籍について解説されており、

ある種の読書法の総説的書籍であると思います。

 

そして本好きにとっては、本をどんどんと積んでいくことに罪悪感を覚えなくても良い、免罪符的な書籍です(笑)。

 

 

★スライド1枚まとめ★

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★今回読んだ本★ 

積読こそが完全な読書術である

積読こそが完全な読書術である

 

 

 

「『教養』とは何か」

読書記録。

今回は阿部謹也さんの「『教養』とは何か」です。

 

前回こちらの記事を投稿した後、フェイスブックのコメントで教えてもらいました。

 

巷では空前の「教養」ブームでありますが、改めて教養とはなにか、教養があるとはなにか、考えさせられる本でした。

 

自分一人で身につけて、自分ひとりで完結してしまっている知識は教養とは言えず、人と人との関係の中で自分自身の立ち位置を認識して、そして周りの人たちに影響してより良い方向に導いていこうとする姿勢やその状態のことを、「教養がある」と言います。

 

単なる物知りや自己満足の知識は、教養ではないってことですね。

社会の中に活かしてこその教養。人が社会的な生き物であることを再認識して、真の意味での教養を身に着けていくべし。

 

 

★この本の1枚スライドまとめ★

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★今回読んだ本★

「教養」とは何か (講談社現代新書)

「教養」とは何か (講談社現代新書)

  • 作者:阿部 謹也
  • 発売日: 1997/05/20
  • メディア: 新書
 

 

教養ってなに?なぜわたしたちは学ぶのか?(「教養の書」)

 

「教養の書」

教養の書 (単行本)

教養の書 (単行本)

  • 作者:戸田山 和久
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

本屋でカバーを見かけて、内容も確認せずに買った本。

装丁がかっこよかったのと、タイトルに惹かれてジャケ買い

 

大学教授である著者がこれから大学生活を送るであろう若者に向けた書籍。

教養とはなにか?その定義付けから、どうして私達は学ぶか、そういった根源的な問いをぶつけてくれる本。

 

教養ってなに?

教養とはなにか?その定義について、この本にはこう書かれている(125ページ)。

社会の担い手であることを自覚し、公共圏における議論を通じて、未来へ向けて社会を改善し存続させようとする存在」であるために必要な素養・能力(市民的器量)であり、また、己に「規矩(きく)」を課すことによってそうした素養・能力を持つ人格へと形成するための過程

(※規矩(きく):自分の行動を規制する基準のこと)  

 

そしてここに書かれている素養・能力は、以下の3つを含意する(125ページ)。

①大きな座標系に位置づけられ、互いに関連付けられた豊かな知識。さりとて既存の知識を絶対視しない健全な懐疑。

②より大きな価値基準に照らして自己を相対化し、必要があれば自分の意見を変えることを厭わない闊達さ。公共圏と私生活圏のバランスをとる柔軟性。

③答えのみつからない状態に対する耐性。見通しのきかない中でも、少しでもよい方向に社会を変化させることができると信じ、その方向に向かって①②を用いて努力し続けるしたたかな楽観性とコミットメント。

 

なんだか仰々しいイメージもあるけれど、これからの社会の未来をつくっていく若者にむけた強いメッセージのようにも受け取れますね。規矩という言葉もキーワード。

 

3つの素養・能力については、学びの姿勢として重要かと思います。位置座標、関連付け懐疑、相対化、闊達さ、柔軟性、そしてネガティブ・ケイパビリティ

 

 

なぜわたしたちは学ぶのか?

こういった役割としての教養を認識しておくことも重要ですが、本来的に知ること自体の意義は、自分のため、自分の人生のためにあると語られています。

 

知ることは楽しみなのです。そして楽しみはそれ自体が価値であり、究極目的です。知識は楽しみをより大きくしてくれる。これは実感としても非常にわかります。

ネット検索で代用できない部分はここにあります。「リアルタイムに楽しむということに関して、知識を自分の頭の中に入れておくことは重要(64ページ)」なのです。

 

教養への道は険しい

この本にはさらに、教養の道を歩むうえにおける「落とし穴」として、フランシス・ベーコンの記した「イドラ論」を取り上げて解説しています。知らない方は、4つのイドラについて解説された記事があるので、こちらを参照してください。現代風に言えば「認知バイアス」ってやつですね。

studyhacker.net

 

 

 

学ぶことは、社会のためでもあり、自分の人生を豊かにするためでもある。当たり前といえば当たり前の結論ですが、この本にはそこに至るプロセスがなんとも味わい深いので、ぜひ読んでもらいたいです。学びは最高の娯楽です。

効率的な勉強って?

雑記。

風のように過ぎ去っていった10月。気がつくと11月になっていました。

夏休み(というか冬)をいただいており、浮世離れした生活を送っています。皆さんおげんきですか?私は元気です。

 

今週は時間的余裕があることもあって、たくさんいろいろな本を読ませてもらっています。主に哲学関連の書籍が多いのですが、抽象度の高い内容が多く、即戦的な知識はほぼ有りません。ただ、こういう勉強をしているときのほうが、なんだか楽しいんですよね。「暇と退屈の倫理学」とかは、本当に読んでいて面白かったです。哲学書ですが、文体の柔らかさもあって、するすると読んでいくことができました。「退屈」という概念から、あれほどまで考察を幅広くしていけることに感銘を受けました。

 

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

 

 

 

さて、ここ最近のわたしはというと、日々の業務をこなすことに必死でした。わからないことが多すぎて、その場で調べながら対応し、問題がやっと解決しそうかとおもったら更に問題が降り注いできていて、パニックゾーンに入っていたと思います。

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そこで求められていたのは即戦的な知識・技術。現場に対応できるスキル。初めての領域での診療ということもあって、いかに効率よくこなしていくか、みたいな状況でした(あまり医療で「効率的」という言葉を使いたくはないのですが)。

 

そんな感じで、時間的に余裕がないと、哲学書みたいな勉強なんてやっている暇がありません。精神的な余裕もありませんでした。いや、哲学書に限らず、目の前の問題を解決するため以外の情報や知識に目を向けることもできていませんでした。いかに効率的に勉強するか。効率的に情報や知識を蓄えるか。

そんな生活を1ヶ月やっていただけで、精神的に悲鳴をあげていました。なんと弱い僕の精神・・・。

 

ただ、そんな状況を省みて、ふとおもいました 。

「効率的な勉強ってなんだろうか」と。

 

もちろんその場で追い込まれた状況にいれば、それを打破するために奮闘する姿勢は重要ですし、その時々で必要とされることを勉強すること自体は必要です。状況に応じた必要な状況で勉強することが、いわゆる「効率的」なのかもしれません。

 

ただなんとなく、これだけだと面白くないんですよね・・・。主体性が伴ってないというか。どちらかというと受動的。テストにでるから勉強しているみたいな状況。この記事を書いていてなんとなくわかってきました。そうか、テスト勉強と同じ状況だったから楽しくなかったんだ。How toを勉強する感じ。本質を伴っていなくて、心そこにあらず、みたいな。

 

今見聞きしている情報や体験、経験が重要なのか、無駄なのかどうかは、現時点ではわかりません。意味づけられるのは、もっとあとになってから。この1ヶ月がむしゃらにやってきたことも、この1週間いろんなジャンルの本を読んできたことも、すべてはあとになってから意味づけされます。そこに効率かどうかの軸は有りません。

 

だから、「効率的に勉強しよう」という考え方は、心が貧しくなる考え方なのかもしれません。

 

ところで、頭のキレる人というのは、抽象と具体の往復運動が速い気がします。日常生活でふれる情報や体験をすぐに自分事として捉える準備ができていて、その具体的内容を抽象化し、自分事に転用することができる。しかも具体から抽象にもっていくときの幅が大きい。そんな人に憧れたりしています。

 

こういう能力っておそらく、効率的に学習して身につくものではないのだと思うのです。おそらく時間的余裕があったりとか、長い時間軸をもって多分野に渡る学びを積み重ねたりしているのではないかと。効率性は意識していないはず。

 

なんだかまとまりのない文章になってしまいましたが、この1週間を経て、興味の赴くままに勉強できるって幸せなことなんだと改めて実感しました。また時間をみつけて、読んだ本の学びをまとめてみようと思います。

 

 

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