岡山の家庭医の読書・勉強ブログ

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カルテ記載における引き算(『書くことについて』)

余白を作る

最近はラジオ的に「荒木博行のbook cafe」を通勤中に聞いています。

先日聞いた放送の中で、スティーブン・キングの「書くことについて」という本が紹介されていました。

 

書くことについて (小学館文庫)

書くことについて (小学館文庫)

 

 

スティーブン・キングモダン・ホラーの帝王です。

代表作であるシャイニングが僕は好きで、映画を見てから興味をもち原作と映画のストーリーの違いを楽しんだりしていました(いろいろな意見がありますが、僕個人としては映画も結構好きです)。

 

まだこの「書くことについて」という本を読んでいないのですが、荒木さんが紹介されていたなかで、余白の重要性を取り上げられていました。

 

これは小説などにおいて、詳細な描写をすることで読者はある程度共通のシーンをイメージすることができます。しかし一方で詳細な描写は読者の想像の自由を奪ってしまい、頭の中で想像の広がりの楽しみが失われてしまう側面があります。

 

そしてスティーブン・キングは、あえて形容する言葉を少なくしているとのこと。読者の想像に委ねられる余白を作り出すことで、読者それぞれの読書体験が形成されます。

 

 

引き算の難しさ

これをきいてふとおもったのが、日々のカルテ記載です。

 

「いやいや、カルテは公文書なんだから詳細に記載してなんぼでしょ。」と考えられますし、私もある程度そう思います。

もちろんカルテは小説ではないので、余白なんて意識して、「あとは読み手で想像してね」だとその役割を果たしていません。

 

ただ、詳細に書かれて無駄に長文のカルテ記載は本当に必要なのかどうか。時間をかkて長いカルテ記載をして、自己満足になっていないか。

 

カルテ記載は情報の記録でもあり、スタッフ内での情報共有でもある。長文でどこがポイントなのかわかりにくいカルテ記載は、スタッフの貴重な時間を奪いかねないですし、情報伝達によるミスも生まれます。

そして何より、カルテ記載自体に時間がかかる。。。カルテ記載をするために、私達医師は仕事をしているわけではなく(自分で書いていて耳が痛い)、患者への診療にその時間が充分割かれる必要があります。

 

実は詳細なカルテ記載は気合と時間があれば誰にでもできます。僕をふくめて、まだまだ若手の段階では、この必要十分なカルテ記載が結構難しい。

 

必要な情報を、過不足なく、自分にも他人にも読みやすく理解しやすい形で記載できるか。足し算足し算でどんどん膨れ上がっていくカルテ記載から、これは必要ないと思える情報を如何に引き算できるか。これは医学的知識を含めて、総合的な判断能力がなければ難しい。ベテラン医師のカルテ記載で、短い記載ながら必要な情報が詰まっているのは、そういった総合的判断のもとに記載されているからなのだと思います。

 

その時々で求められる内容を考え、スマートなカルテ記載ができることは、身につけるべき一つのスキルですね。僕もがんばります。