個人的な関心もあって、私は哲学に関する書籍を手に取ることが多いです。
哲学の一般的なイメージといえば、「難解」であったり、「生活に役立たない」など、ネガティブな側面が思い起こされることが多いのではないでしょうか。
その一方、哲学を日常生活や仕事に活かす・実践に落とし込むような書籍が最近は多く、実際に哲学をビジネスシーンで活用しようとする流れが、ここ数年起きています。
そんな本を読んでいて、ふと思い浮かんだこと。
家庭医ではない殆どの医師にとって、
疾患の診断・治療といった医学の勉強が臨床に直結して実践的であるとするなら、
家庭医療学は臨床に直結しないような非実践的なもので、知っていても知らなくてもいいような、ある種の教養レベルの認識なんだろうか。
もしそうだとしたらこれって、冒頭に書いたような、ビジネスパーソンにおける哲学を始めとした人文学に対する認識と、似ている気がします。
バランスや割合の問題だと思うんです。
これは決して、家庭医療学のほうが大切だとか言いたいわけでなく、その医師が働いている場面で必要十分な医学的スキルを持ち合わせておくことが前提の上での話であって、臨床においては、医学も家庭医療学も、どちらも同じくらい大切なものなのだと思います。
あえて振り切った言い方をするなら、
家庭医療学が人や社会との関係性を対象にしている学問である点から考えると、
臨床に従事している医療従事者なかで、家庭医療学と無縁であることは決してないということだと思います。
そうはいっても、日々アップデートされる医学情報をキャッチアップして勉強しているだけで精一杯になる中で、家庭医療学を勉強しようという余裕を持つことのできない方が多いのではないかと。
また、わたしを含めて若手医師は、どうしても医学的知識や経験が不足している部分が多く、その点に意識が吸い込まれてしまい、家庭医療学に興味を持つきっかけも少ないのかもしれないです。
もっと気軽に、気楽に、家庭医療学が学べたらいいんじゃないかなと思うんです。
そういうツールや書籍がもっと増えたらなぁとも思ったり・・・。
哲学を多忙なビジネスシーンに活用していこうとしている流れは、家庭医療学を多忙な様々な臨床現場で活用していこうとすることの参考になる気がしています。
そう考えると、殆どの医師にとっての家庭医療学の認識が「ある種の教養レベル」のものであっても、それはそれで興味をもってくれるならアリな気もしてきました。
むしろ、家庭医療学という冠を押しつけすぎるがあまり、他領域の医師に煙たがられていないだろうか、と。
「家庭医療学を学ぶのであれば、かくあるべき!」という厳密さは排他的で、損をしている気がします。
「こんな考え方やフレームがあるんですよ」くらいの感じで紹介するのがいいのかも。
「診療上手になれる!」とか、「外来がたのしくなる!」とか、それくらいのスタンスで、総合診療医や家庭医の先生以外にも家庭医療学を学んでもらえたら、医師にとっても患者さんにとっても、お互いハッピーになるんじゃないかな・・・
そんな風な妄想をしています。
(こういうことを書くと、「まだまだお前は家庭医療学のキホンすらできていないくせに、何を言っているんだ」とツッコミがきそうですが、それは重々承知しております )
結局何が言いたいかと言うと、
「家庭医療学、楽しいからみんなも一緒に勉強しようぜ!」
ってことです。