岡山の家庭医の読書・勉強ブログ

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私が数百人規模の企画運営に携わったことで得たもの(冬セミスタッフとしての振り返り)

ついに今年度の「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー(通称”冬セミ”)」が終了した。私は昨年度に引き続き、全体講演の冬期セミナースタッフ(冬セミスタッフ)として参加した。

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https://confit.atlas.jp/guide/event/jpcawinter16/top

 

無事に終了したことの安堵と達成感とともに、どこか淋しい気持ちもある。

せっかく全力で走りきったので、昨年度から今年度の冬セミにかけて、振り返ってみようと思う。

 

 

 

私はこの2年間で何を得たのか。冬セミスタッフとして参加することのメリットとデメリットをまずはまとめてみようと思う。この記事の一番伝えたいところでもある。

 

セミスタッフのメリット・デメリット

■冬セミスタッフになってよかったこと(メリット)

とにかく楽しい

人脈がかなり広がった:全国の家庭医・総合診療医の同期、後輩、先輩をはじめとして、他領域(たとえば介護、福祉、出版関係者など)の方々。「つながり」を実感。キャリアの多様性も実感できる。

 

ノンテクニカルスキルを伸ばすことができた:企画立案・運営スキル、課題発見スキル、タスク管理スキル、ファシリテーションスキル、チームマネジメントスキル、チームビルディングスキル、リーダーシップ醸成。

 

学びの興味の幅が広がった:介護・福祉、ビジネスルキル・ノンテクニカルスキル、キャリア形成論、哲学、人類学への興味の広がり

 

■冬セミスタッフになってしんどかったこと(デメリット?)

・長期間に渡って時間が取られてしまう:臨床業務との兼ね合いが厳しかったことも。基本的に2年間つづけてのスタッフとなる。

 

・・・・・

 

人は過去を美化しがちなので、そういった点ではバイアスがあるかもしれないが、少々忙しくなってしまうというデメリットと天秤にかけても、セミスタッフになることのメリットは十分にあると感じる。

 

というわけで、この記事を読んだ家庭医療・総合診療に関心のある医師には、

ぜひとも冬セミスタッフになることをおすすめする

セミスタッフとして投資した時間は、大きなリターンをもたらしてくれる。

 

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ここからは、2年間の活動を順に振り返ってみる。自分のための記録でもある。

 

回顧録

セミスタッフになったきっかけ

2018年2月、初期研修医2年目のときに初めて冬セミに参加した。東京大学で開催されており、全国から多くの家庭医・総合診療医の先生方が集まっていた。

そのころにはすでに総合診療の道に進むことを決めていたので、仲間を探しに行くという目的もあり、家庭医療を中心としたセミナーということもあってワクワクしていた。

 

そして1日目の懇親会。「冬セミスタッフに興味のある人は、スタッフに声をかけてください!」とアナウンスされていた。スタッフには興味があったものの、どこか一歩をふみだせなかったが、同じ病院の同期がスタッフとして勧誘されていたのをみて、「ぼくもやります!」と勢いでお願いした。それが冬セミスタッフとしてのはじめの一歩であった。

 

全体講演係に

それから数カ月後。連絡が来て、役職希望の連絡があった。その中で光り輝いて見えたのが「全体講演係」であった。全体講演は、冬期セミナーの目玉企画の1つ。冬期セミナー参加者の大半が参加し、参加人数は200人以上になる。

せっかくやるなら目立つ仕事がしたいと思っていた自分は、全体講演係を第一希望にし提出。晴れて全体講演係となった。

 

2019年8月。夏期セミナーで冬セミスタッフの顔合わせが有り、そこで初めてスタッフの方々とお会いした。全国の家庭医・総合診療医の仲間がこんなにもたくさんいるのかと嬉しい気持ちになり、そして全体講演係の他の2人の先生ともお会いした。全体講演テーマのアイデア出しを行い、「介護」をテーマにしていくこととなった。

その頃はまだまだ積極的に関わりきれていなかったと思う。9月〜10月と全体講演係のなかでミーティングを行いながら、企画の準備を詰めていった。

 

 

何回にも渡る入念なミーティング

しかし、どこか内容が物足りない。本当にこのままで良いのだろうかと、若干の不安もあった。そんな時、ある先生が全体講演の企画・運営に力を貸してくださることとなった。その頃から私の全体講演係としての、冬セミスタッフとしての自覚が芽生えてきたように思う。

 

その先生はセミナーやワークショップをこれまでに数々企画・運営してきた経験があり、ファシリテーターとしての経験も積み重ねてきていた。正直、その先生にご指導いただくまでは、セミナーの企画をなめていたと思う。毎回のミーティングの中で、「こんなことまで決めておかないといけないのか」と驚かされ、視野の広さ、視点の多様さ、いずれも感嘆するばかりであった。

ミーティングを重ねていく中で、スタッフがそれぞれ順番にミーティングのファシリテーターをやることとなった。そのときに参考図書として教えていただいたのが、「ファシリテーションの教科書」である。 

 この本にはファシリテーションの具体的方法論が書かれてあるだけでなく、それに関連してチームマネジメント、課題発見・課題解決方法に至るまでカバーされており、現在も私のバイブルとなっている。

 

この本を片手に、毎回のミーティングでファシリを意識しながら、企画を練り上げていった。半年間で毎月、いや2週に1回くらいのペースでミーティングを行いながら入念な準備を行い、「どんな学びを参加者に持って帰ってもらうか」、ディスカッションを盛り上げる仕掛け作りも行い、ようやく本番を迎えた。

 

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200人を超える参加者となり、本番は大成功。参加者間のディスカッションも盛り上がり、後半のシンポジウムでも登壇者のディスカッションに参加者も意見を出し合い、盛況のうちに終わった。

 

 

全体講演、大成功!・・・と同時にのしかかるプレッシャー

「1年間、長かったな・・・」、はじめての冬セミスタッフを終え、そんな気持ちでいた。達成感はあったものの、どこか悔しかったり、プレッシャーを感じていたりした。

自分のなかではベストをつくしていたつもりではあったが、他の2人の全体講演スタッフの先生方の頑張りや成長をみていて、どこか自分が見劣りしていたように感じていた。

その2人の先生はこれでスタッフを卒業となるため、おそらく私が次年度の全体講演係のリーダーとなるのであろうと思っていた。「自分がリーダーになったとして、今年のような全体講演のクオリティを出すことができるのだろうか」。

  

セミスタッフ2年目

そして迎えた冬セミスタッフ2年目。私はやはり全体講演係のリーダーとなった。その頃、ちょうど新型コロナウイルスが日本で流行していた2020年4月。冬セミがオンライン開催となるか、オフライン開催となるか、まだ先行きが見えない中であった。

 

新たに3人の全体講演係のスタッフがチームメンバーとなり、ともに企画を作っていくこととなった。

昨年度のミーティングの様子を思い出しながら、毎回私がミーティングのファシリテートを行いつつ、メンバーの意見を引き出し、まとめる役割を担っていた。毎月のリーダー会議に加えて、全体講演係としてのミーティング。そして新型コロナウイルスによる臨床業務の多忙さも相まって、なかなかに心身ともに削られていった。

 

今年のテーマは「健康格差」。かなり忙しい状況が続いていたが、以前から関心のある領域であったこともあり、前向きに準備を進めていくことはできた。

 

ミーティングを重ねていく中で、昨年度の経験が活かせた場面は多かった。ファシリテーションはもちろんのこと、チームマネジメント、タスク管理はなんとかこなすことができた。そんな中、やはり昨年度の全体講演のクオリティの高さからくるプレッシャーが、常にのしかかっていた。「今年は失敗したらどうしよう・・・」

 

セミ、オンライン開催

2020年度の冬セミはオンライン開催となった。全体講演も初のオンライン開催となり、昨年度に行っていた会場準備はなくなり、別の準備が必要となった。いうなれば、ある種のゼロベースからのスタートである。これは意外とポジティブな側面に感じた。昨年度と同じ状況であれば、やはり内容を比較してしまう。オンラインだからこそできる学びを考えていくきっかけになった。

 

Zoomウェビナーでのシンポジウム形式とし、参加者から質問やコメントをチャットに記入しもらい、それらをもとにディスカッションしていく形とした。

昨年度の企画準備を踏襲(というか真似)し、登壇者との事前打ち合わせをおこないながら、スタッフ内で考えている企画趣旨や方向性を登壇者と共有した。想定質問、事前アンケートによる認知度調査、SNSでの積極的な広報。

今思えば、どれも昨年度の全体講演の準備で行っていたことを真似ていったのである。「去年、全体講演係として参加できていて、本当によかった」と実感した。やはり経験は強い。

事前の参加登録では、300人に迫る勢いで全体講演参加者がいるときき、嬉しさとプレッシャーが比例しながら高まっていった。

 

そして迎えた本番

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2021年2月6日。ついに全体講演本番がやってきた。参加者は当初予定していたよりも若干少なかったが、それでも200人を超えていた。私は司会・ファシリテーターとして参加。前半の講演、後半のシンポジウム。

 

前半の講演で思った以上に時間が伸びてしまい、タイムマネジメントがうまくいかなっった。タイムキーパーとしての役割が十分にできなかったことが問題であった。しかしその分、参加者からの反応は良好であり、チャット欄もかなり盛り上がっていた!

 

参加者の熱量は上々。そのままの勢いで後半のシンポジウムを開始した。健康格差をテーマとしていたが、さらに抽象度をあげて、社会課題に医療者がどうかかわっていくのかというのが大きなテーマになっていった。参加者からのコメントを拾いながら、登壇者の方々のコメントの要旨をつかみつつ、なんとかさばき切ることができた。(正直、あまりにも必死だったので、その時の内容はあまり覚えていない。あとで動画を見直してみたいと思う。)

 

結果的には、今年度も大成功であったのではないかと思う。

まだなにも具体的な振り返りはできていないものの、感触は悪くなかった。参加してくださった先生方からも、反響は良かった。健康格差をはじめとした社会課題に自分ごととして関わっていく、その重要性を伝えることができたのではないかと思う。

 

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こうやって書いてみると、今となっては清々しい気持ちである。

すべてを言語化できているわけではない。ただ、冬セミスタッフとして2年間携わり、得たものはとても大きい。この2年間の時間の投資は、大きなリターンを生んでくれた。スキルアップももちろんであるが、一番は人との繋がりであったと思う。全体講演係として冬セミに関わったからこそ、学びの幅や、生き方の幅も広がったように感じる。

 

最後にもう一回だけ。

家庭医療・総合診療に興味のある若手医師は、

ぜひとも冬セミスタッフになることをおすすめする