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透析患者に造影CT検査を行ったら、検査後にすぐ透析したほうが良いのか?

外来当直で疑問に思ったこと。

透析患者における造影CTについて。

 

 

高度腎機能障害のある患者に造影CTをとりたいと思ったとき、

すでに透析治療をうけられている患者のほうが造影CT検査にふみこみやすい。

 

既に腎機能が廃絶しており、それ以上腎機能障害が悪化することがないと考えられている。

 

なんとなく透析患者に造影CT検査を行ったら透析スケジュールを変更して、検査後にすぐに透析にいってもらうみたいなプラクティスだったのですが、実際のところどうなのだろうと思って調べてみると・・・

 

 

 

血液透析中の患者では(中略)、造影剤を使用したからといって、1日前倒しにして透析するとか、午前の透析を造影剤を使用した後の午後に変更する、などの(透析スケジュールの)変更は不要

(※参考文献:救急画像診断「超」入門 危機的な所見を見抜くために 155ページ)

 

 

 

なんだって! 透析のタイミングを変更しなくても良かったんですね・・・。

造影剤自体は腎排泄ですが、腎機能障害が進行していくと、胆道系排泄の割合が高くなっていくとのことです。

(※参考文献:救急画像診断「超」入門 危機的な所見を見抜くために 64ページ)

 

 

 

Googleでも「透析 造影剤 タイミング」で検索してみたら、過去に医学界新聞でも取り上げられていました。下記はその引用。

維持血液透析患者が造影剤を使った検査を受けた場合は,次回の血液透析まで待たず,直ちに透析を行うべきでしょうか。

 → “原則的”には,「造影剤を抜くための血液透析」は必要なし

 以前は,維持血液透析患者が造影CTや心臓カテーテル検査などの造影剤を使用した検査を受けた場合,造影剤を除去するため,検査直後に血液透析を施行することがよくありました。これは,高浸透圧性造影剤が主流であった時代に,造影剤使用後に見られたうっ血性心不全の発症を防ぐために施行していたものが習慣化したのだと考えられます。しかし,現在は低浸透圧性造影剤が使用されるようになっています。また,造影剤も少量で済むようになりました。以上のことから,「造影剤使用後に行う造影剤を抜くための血液透析」は原則的には必要ないと考えられます。

 

 ここで「原則的」としたのは,原病や造影剤の使用量によっては,まれに透析が必要になることもあるからです。では,どれぐらいの量の造影剤を使用したときに「多い」と判断し,緊急透析を実施すればよいのでしょうか? Younathanら(Younathan CM, et al.  AJR Am J Roentgenol. 1994 ; 163 : 969-71.)は,225 mLまでの造影剤使用量では,緊急透析を必要とした患者はいなかったと報告しています。このことからも冠動脈インターベンションを除けば,ほとんどの検査では透析が不要となります。造影剤の使用量が多いケース(目安は200 mL以上)では,心不全の出現,悪心嘔吐の有無によって,緊急透析の実施が必要かを考えるとよいでしょう。なお,冠動脈インターベンション実施直後は不整脈や低血圧などが出現することがありますし,また血液透析の実施自体が合併症を誘発する原因になり得ます。リスクとベネフィットを踏まえて判断しなければなりません。

 

Answer…「造影剤使用後に行う造影剤を抜くための血液透析」は,原則的には必要ありません。しかし,原病や造影剤の使用量によっては緊急透析が必要になる場合があります。

(※引用:医学書院/週刊医学界新聞(第2952号 2011年11月07日))

 

ということで、透析患者において、冠動脈インターベンションのように大量に造影剤を使用する場合を除けば、直ちに透析をする必要はないようです。

 

 

 

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(写真:愛媛の鍋焼きうどん)