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アルコール依存症患者がショックの時、考えるべき鑑別

アルコール依存症患者がショックで搬送。

 

言われてみれば、「そういえばこんな疾患あったな・・・」と思い出し、調べてみると勉強になったので共有します。

 

 

 

【症例】

患 者:73歳男性
主 訴:呼吸困難

既往症:アルコール依存症、糖尿病

アレルギー歴:なし

 

現病歴:元々アルコール依存症があり、嫌酒薬を内服中。食事は十分取れていた。某日に酒を半升ほど飲んだところで、急に呼吸困難を訴えたため家人により救急要請・救急搬送された。

救急隊接触時の血圧は 160/92 mmHg であったが,搬送中に車内で収縮期血圧 60 mmHg まで低下した。来院時, 呼吸困難と上半身の掻痒感を訴えた。

 

来院時現症:血 圧 64/41 mmHg、脈 拍 108 回/ min・整、呼吸数 22/min、体温 35 . 6 °C、酸素飽和度 97%、意識レベル JCSI-1 で、上半身の発赤と酒臭が認められた。末梢は温かい。

 

検査所見:心電図は洞性頻脈の所見のみで、ほかに明らかな異常所見なし。腹部エコーでも明らかな腹水なく、採血検査ではHb低下もCRP上昇もなし。

(中毒研究 26:295-299,2013 より一部改変)

 

診断は・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シアナミド-エタノール反応」

 

 

嫌酒薬であるシアナミド(商品名:シアナマイド)アカンプロセート(商品名:レグテクト)を内服している患者が一定量の飲酒を行うと、アセトアルデヒドが蓄積し、血管拡張によりショックとなってしまう状態です。

 

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https://www.mhlw.go.jp/kokoro/disease_detail/1_01_02alchol.html )

シアナミドはこのアルコール分解プロセスのアルデヒド脱水素酵素を阻害し、アセトアルデヒドを蓄積させることで、二日酔いの状態にさせることで、嫌酒作用を発揮します。


アセトアルデヒドには血管拡張作用があるので、たくさん体に溜まってしまうと、血管拡張によりショック(warm-shock)になってしまう、ということですね。

 

治療は 大量補液+ノルアドレナリン持続静注 が良いとのことです。(中毒研究 26:295-299,2013)  敗血症のように、末梢血管をしめる治療が必要。

 

もちろんいきなりこの疾患を決め打ちして対応するのは危険なので、一般的なショックのプロトコルに準じた対応は必要です。

 

 

 

 

あとは、鑑別リストを載せておきます。

アルコール依存症患者がショックとなった時に考える鑑別

・大量嘔吐 → 脱水

・急性膵炎

・wet beriberi

・肝硬変 → 食道静脈瘤破裂、肝細胞癌破裂、特発性細菌性腹膜炎、壊死性筋膜炎(ビブリオ・バルニフィカス)

シアナミド-エタノール反応

 

【参考文献】

・中毒研究 26:295-299,2013

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写真:東京のハンバーガー店・FIRE HOUSEのハンバーガー(2019年12月撮影)